HOW TO MAKE SOUND EFFECTS
効果音を探すのをやめ、
あなた自身で効果音を作ってみませんか?
THEME ヘリの音を”構造”からモデリングする!
先日、自衛隊のイベントでヘリコプターの音を録音する機会がありました。間近で体感したヘリの音は、様々な発見があって非常に興味深かったです。高速で飛ぶ、垂直状態からの旋回、ホバリングなど機動性の高いパフォーマンスが印象的でした。今回はそんな体験を踏まえて、私なりに研究したヘリの音作りをご紹介します。
ヘリの音はどんな音で構成されているのか?
ヘリコプターの音を特徴づけている大きな要因は、
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メインローター部分のプロペラが回転するバタバタ音
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テイルローター部分のプロペラが回転するブーンという音
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エンジンのキーン!という音
この3つです。これらの音を再現することでヘリコプターの音をモデリングします。
メインローター部分のバタバタ音を作るには?
メインローター部分とは、ヘリコプターの機体上でグルグルと回っているプロペラ部分のことです。バタバタと特徴的な音はヘリコプターらしさを最も感じさせる音ですよね。
このメインローターの面白いところは、上昇するときも下降するときもプロペラの回転数がほとんど一定で変わらないことです。不思議じゃないですか?
私はヘリコプターが上昇するときは、クルマがエンジンの回転数を上げるようにプロペラの回転数を上げるものだと思ってました。でも実際に体感したときに一番不思議だったのが、上昇するときも下降するときもプロペラの回転音にほとんど変化がなかったことです。(バタバタ音のリズムや音程に変化がなかった)
ではプロペラの回転数を上げずにどうやってヘリコプターは上昇しているのでしょう?なんと、プロペラ一枚一枚の空を切る角度を変えることで「揚力」を得て上昇するんだそうです。たしかにプロペラの板を水平に空気へ当てるよりも、斜めにして当てたほうが空気に乗って板が浮き上がるようなイメージが想像できます。微妙な角度調整で高度を調節しているなんて、操縦する人はスゴイですよね。
ちなみに、メインローターの回転数はだいたい1分間に300~400回転だそうなので、1秒間になおすと約5~7回転になります。なるほど、それで耳でもバタバタと聞き取れるようなリズムに感じるんですね。(ちょうどテンポ120で6連符を鳴らすようなリズム)
それではこれらを踏まえてメインローターのバタバタ音を作りましょう。
大きなプロペラが空を切って回転しているので、思いついたのが「空振り音のループ再生」です。実際に近距離で体感したプロペラの音はとても迫力があったので、空振り音も「ヒュッ」とした軽いものではなく、「ブオン!」という重たいものを用意しました。
▼メインローター用の空振り音素材
次に、この空振り音をループするように設定します。
この Harmor というソフトは、読み込んだファイルをループさせるのはもちろん、ループ範囲やスピードも調節できるのでプロペラ音の再現に便利です。空振り音をループさせた音がこちらです。
▼空振り音をループさせた音
プロペラっぽい雰囲気は出てるのですが、ループスピードを速めたことで音がやせてしまいました。近距離で感じた迫力を再現したいので、もうすこし迫力や荒さ、ウネリが欲しいですね。それらを付加するために、
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コーラスでステレオ感を追加
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歪みエフェクトで「荒さ」を付加
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ピッチを下げて、コンプで迫力とアタック感を追加
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フェイザーでウネリを演出
上記のエフェクトで加工しました。
▼メインローターのプロペラ音完成
メインローター部分はこれで完成です。
テイルローターのブーンという音を作るには?
次にテイルローター部分の音を再現します。テイルローターとはヘリコプターの尾についている小さいプロペラ部分のことです。
このテイルローターの役割も興味深いです。メインローターの大きな羽を回転させると、機体はその回転の力によって回ってしまうのだそうです。テイルローターはこうした機体の回転を抑えるために、プロペラを縦回転させ、横方向に力を与えてバランスを取る役割をしているんですね。
プロペラが小さいため、回転数はメインローターよりはるかに多く、1分間に1300回転ほど回転しているそうです。1秒間にすると約20~30回転になりますので、1つ1つの音を聞き分けることは不可能です。これが、「ブーン」と聞こえる原因なんですね。
それではテイルローターの音を再現しましょう。メインローターと同じく空振り音のループ再生を利用しますが、羽の違いを出すためにメインローターよりは軽めの空振り音を用意しました。
▼テイルローター用の空振り音素材
次にループ設定とエフェクト加工ですが、メインローターと違って、
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ループスピードを高速にする
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ボリュームをLFOで揺らす
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ステレオ感は抑える
という点に注意です。ループスピードは前述の通り1秒間に20回転以上を再現するため超高速にします。また、テイルローターは縦回転のためなのかヘリの向きが少し変わるだけで、回転音の音量が変化していました。これを再現するためにLFOを使ってボリュームを揺らします。さらに定位もある程度ハッキリしていたのでステレオ感はあまり出さないほうが雰囲気が出ると判断しました。
▼テイルローターのプロペラ音完成
エンジン音のキーンという音を作るには?
ヘリコプターのエンジンはターボシャフトエンジンと呼ばれるジェットエンジンの1種が一般的だそうです。ジェットエンジンの音の特徴は、低い音から高い音へのなめらかな音程変化と耳につんざく高周波です。
すぐに思いついたものが、「掃除機」「ドライヤー」です。音がなめらかに上がる特徴や空気の吸い込む音など、似ている部分が多いのでさっそく二つを録音して混ぜてみました。
▼掃除機とドライヤーの音を混ぜた音
なかなかいい感じなのですが、もう少し高周波がほしいところです。ということで「電動ドリル」の音も混ぜてみました。
▼掃除機、ドライヤー、電動ドリルの音を混ぜてエンジン音完成
キーン!というジェットエンジンっぽさが出て良い感じになりました。これでエンジン音は完成です。
メインローター、テイルローター、エンジンを混ぜて完成!
これでヘリコプターの音を構成する、メインローター、テイルローター、エンジンの3つが揃いました。あとはこの3つを混ぜればヘリコプターの音が完成です。
▼ヘリコプターの音を再現した完成音
メインローター、テイルローター、エンジンの音量バランスは重要です。バランス次第でヘリとの距離感を演出することができます。ヘリに近づくほどエンジン音はとても大きくなり、離れるほどエンジン音は聞こえなくなります。はるか上空を飛んでるようなヘリは、ほぼエンジン音は聞こえません。逆にヘリの中にいる場合などは、プロペラ音よりエンジン音のほうが大きいです。再現したいヘリのシーンに合わせて、ヘリの音も構成していきましょう!
最後にもう一度ヘリの動画を見てみましょう。
もうお気づきでしょうか??
そうです、この動画で流れている音声は、私が作ったヘリコプターの音とそれっぽい群集の声をミックスした、「嘘」の音です(笑)
一番最初の動画ですぐ見抜いた方は素晴らしい!私の負けです(笑)
でも、最初の動画で普通に聞き流してもらえていたなら・・!私の勝ちですッ!
勝負の結果が気になりますが、今回はここまで。それではまた来週!
効果音メモ
ヘリコプターにはいろんな種類があって、テイルローターのないもの、メインローターが二つあるものなど多彩です。動画のヘリは「チヌーク(CH-47J)」と呼ばれる機体で、前後のローター回転を反対にすることで機体の回転を抑えています。これに合わせて動画ではテイルローターの音は使わず、メインローターの音を2つ使って再現しています。このように特徴に合わせて音も構造を変えてやると、ヘリの違いも音で表現できますよ!(^^)
OGAWA SOUND:小川
動画追加!
ヘリコプターホバリング音の作り方を動画にまとめました!記事ではわかりにくい音の変化を感じてもらえると思いますので、是非こちらもご覧ください!
今週の記事はいかがたっだでしょうか?効果音について少しでもご興味や関心を頂ければ大変嬉しく思います。
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それでは来週の「効果音の作り方記事」もお楽しみに!
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